肝臓病予約外来
肝臓病予約外来では、患者一人ひとりの状態を分かりやすく説明します。
「検査でHBs抗原陽性、HCV抗体陽性あるいはB型肝炎やC型慢性肝炎と宣告され、インターフェロン治療をすると言われたが、その後の説明が十分でない。先生は忙しそうで聞けないし……」という声が患者様からよく聞かれます。病気の状態や最新の治療に対して、きちんとした説明を受けていない人が少なくないのが現状のようです。
当院では、一般の肝臓外来の他に「肝臓病予約外来」を設けております。肝臓病の治療その他でお悩みの患者様あるいはご家族の方々のための外来です。
鈴木 通博 医師
対象 |
初めて受診される方や、病状に変化があって詳しい説明をお聞きになりたい方、他院を受診していてセカンドオピニオンとして説明をお聞きになりたい方にお勧めします。初めて受診される方や、病状に変化があって詳しい説明をお聞きになりたい方、他院を受診していてセカンドオピニオンとして説明をお聞きになりたい方にお勧めします。 |
日時 |
金曜日の午前10時から11時まで、一人約20分の予定でさまざまな相談に応じています。 |
負担 |
保険の自己負担のほかに、予約外来料として2,100円がかかります。 |
お申込み |
外来受付係で承っておりますので、お電話でお申し込みください。
予約受付:03-3312-0151(内100) |
平成20年4月から肝臓病予約外来担当医師の枠を拡大しました。
聖マリアンナ医科大学病院 教授
川崎市立多摩病院 院長
鈴木 通博 医師
肝炎・肝硬変・肝癌の治療を専門としてます。ベグインターフェロン、リバビリン併用療法など慢性肝炎に対して積極的な治療を行っております。また、インターフェロンの投与でウイルスが排除できなかった方のフォローもいたしております。
元順天堂大学医学部附属 順天堂医院
消化器内科 准教授
今井 康晴 医師
肝硬変、肝癌の治療を専門としており、ラジオ波焼灼療法の第一人者です。当院において造影エコーによる診断もしております。
飲み薬で治すC型肝炎治療にチャレンジしませんか
インターフェロン注射を使わない内服薬のみによるウイルスを排除する、いわゆるインターフェロンフリー治療が認可され、C型肝炎治療の主流となっています。 従来の治療に比べて副作用が少なく、治療効果も格段に向上しています。
【対象となる方と治療法】
C型肝炎ウイルス ジェノタイプ1型の方も2型の方も、インターフェロン治療歴のある方もない方もすべての方が治療の対象となりました。
- ジェノタイプ1型:
現在、複数の薬が使用可能となっています。どの薬がよいかは検査値やご病状によりますので、担当医と相談の上、決定します。治療期間は12週間です。
- ジェノタイプ2型:
2種類の薬を12~16週間内服します。
いずれの治療も医療費助成制度が利用できます。
これまで、インターフェロン治療を受けたがウイルスが消えなかった方、合併症などでインターフェロンが使えなかった方、年齢的にインターフェロンが難しいと言われていた方、肝硬変といわれ治療をあきらめていた方に、期待できる治療法です。
これまで当院でも多くの方が治療を受けられ、C型肝炎ウイルス排除に成功されています。
治療を受けられたみなさまから「インターフェロン治療ではつらい思いをしたが、飲み薬の治療で楽に治療できた」、「長年悩んでいたC型肝炎ウイルスが排除できて、気持ちが晴れやかになった。」、「治療が成功し前向きな気持ちになった」などのお言葉をお聞きしています。 肝臓外来にて、肝臓専門医が詳しくご説明させていただきます。 また、医療費助成制度については医事課担当者がご案内いたします。 C型肝炎に悩むすべての方が治療成功に結び付くようサポートさせいただきたいと思います。是非、ご来院ください。
B型肝炎ウイルスキャリアとは
B型肝炎ウイルスを体内に保有している方を「キャリア」と呼びます。
数値が落ち着いている「無症候性キャリア」の方から、肝臓の数値が高くなる「慢性肝炎」、病状の進行した「肝硬変」「肝がん」まで病状はさまざまです。B型肝炎の場合は数値が落ち着いている無症候性キャリアの方や慢性肝炎の方から肝硬変を経ることなくいきなり肝がんを発症することもあります。そのため、定期的な血液検査と超音波検査などの画像検査を受けていただくことが重要です。
【B型慢性肝炎 最新治療情報】
B型慢性肝炎の患者さんはご病状によっては治療が必要になります。B型肝炎ウイルスは体から排除することは非常に難しいため、ウイルスをできるだけ抑えて正常な肝機能を維持し、肝硬変や肝がんになるのを予防することが治療の目標です。
現在の治療法は大きく分けてインターフェロンと核酸アナログ製剤です。
どの治療がよいかは、患者さんのご病状、年齢、ウイルスの遺伝子型などによります。
それぞれの治療に下記のような長所、短所があります。
インターフェロン
- 注射薬です。
- 自宅で自分で注射する自己注射と、週一回病院で注射するタイプがあります。
- 治療期間は半年~1年の期間限定です。
- 副作用には発熱、だるさ、吐き気、抜け毛、気分の落ち込みなどがありますが、症状には個人差があります
- B型肝炎ウイルス遺伝子型(ジェノタイプ)によって治療効果に差があります。
核酸アナログ製剤
- 飲み薬です。
- B型肝炎ウイルスが増えるのを抑える薬であるため、中止することなく毎日飲み続ける必要があります。
- インターフェロンのような強い副作用はありません。
- 現在は主に以下の3種類が用いられています。いずれの薬もウイルスを抑える効果は強く、長期に飲むことで薬が効かなくなる耐性が生じる確率は低いです。
- エンテカビル(バラクルード®)
- 2006年から使用され治療実績がある。妊娠出産の予定のある方は控えるのが望ましい。
- テノホビル(テノゼット®)
- 2014年から使用可能となった。妊娠出産の予定のある方にも安心して使用できる。まれに腎機能障害の副作用があり注意が必要。
- テノホビル アラフェナミドTAF(ベムリディ®)
- 2017年2月より使用可能となった。テノホビルの有効性を保ちつつ、腎臓への副作用が軽減された。
以上のようにそれぞれの治療に長所、短所がありますので、患者さんのご病状はもちろん普段の生活やお仕事の状況なども含めて担当医師とよく相談し治療を選択することが大切です。
B型肝炎ワクチン接種の勧め
現在、20代から30代の若い方を中心にB型急性肝炎の性交渉による感染が増加しています。B型急性肝炎はB型肝炎ウイルスを原因とする病気です。B型肝炎ウイルスは性交渉によって容易に感染します。急性肝炎を発症するとだるさ、吐き気、黄疸などの症状がでます。まれに死亡率の高い劇症肝炎になることもあります。またこれまでB型急性肝炎は、重症化や劇症化しなければ完全に治癒する病気と考えられてきました。しかし、最近ではもともと欧米に多く認められた遺伝子型(ジェノタイプA)のB型肝炎ウイルスが日本でも増加してきていることが報告されています。当院での最近の調査ではB型急性肝炎の約7割の方がこの遺伝子型(ジェノタイプA)であることが確認されています。このような欧米型のB型肝炎ウイルスは、これまで日本に多く認められたタイプと異なり遷延化(病気が長引く)、また慢性化が多いといわれています。当院の調査でも多くの方が1か月以上入院治療を必要としたり、退院後も完治するまでに3~6か月かかっています。また慢性肝炎になるとその後肝硬変、肝臓がんになるリスクが高まります。
このようなB型肝炎ウイルス感染を防御する方法としてB型肝炎ワクチンがあります。ワクチン接種で抗体を獲得しておけばB型肝炎ウイルスに感染することはありません。
特に性的活動の活発な若い世代の方をはじめとして、すべての方がワクチンを接種すべきと考え、当院ではワクチン接種を皆様方にお勧めをしています。
なお、このB型肝炎ワクチンは世界的にはほとんどの先進国で全国民に対して接種が行われているのにもかかわらず、日本ではこれまでこの制度が取り入れられていませんでした。そしてついにH28年10月よりB型肝炎ワクチンが定期接種化されました。平成28年4月1日以降に生まれる赤ちゃんは、全員が接種するワクチンとなりました。
当院では以下の様にワクチン接種を行っています。
ワクチン接種のスケジュール
B型肝炎ワクチンは1回目、2回目(1回目から1か月後)、3回目(2回目接種から5~6か月後)の3回接種です。
- 初診時に血液検査をさせていただきます。ここで抗体が陽性であればワクチン接種の必要はありません。
- 1回目接種(筋肉注射もしくは皮下注射)
- 2回目接種(1回目から1か月後)
- 3回目接種 (2回目接種から5~6か月後)
- 3回目接種から1か月後に血液検査を行い抗体ができているかを確認します。抗体ができる確率は85~95%です。
費用は診察料、3回のワクチン接種、および接種前後の検査を含め約21000円です。詳細は受付にお尋ねください。
その他、ご不明な点、ご質問等ありましたら肝臓外来にてお受けいたしますので外来表を参照していただき御来院ください。
HBVジェノタイプ(遺伝子型)とは
HBV(B型肝炎ウイルス)にはそのジェノタイプ(遺伝子型)によって、AからJまでの10つのタイプがあります。ジェノタイプは地域によって分布が異なります。日本ではジェノタイプCが大半を占め、沖縄、東北地方ではジェノタイプBがみられます。ジェノタイプ Aは欧米、アフリカ南部に、ジェノタイプDは地中海沿岸、インドに多くみられます。このジェノタイプの違いによりB型肝炎の病気の経過が異なることや、治療効果が異なることがわかっています。例えば、①ジェノタイプAは他のジェノタイプと比べてインターフェロンの効果が高い、②ジェノタイプCは他のジェノタイプと比べて肝癌の発生率が高い、③ジェノタイプAの急性肝炎では治るまでに時間を要したり慢性化する率が高い、といわれています。また、従来日本では少なかったジェノタイプAによるB型急性肝炎が近年増加しており問題となっています。
B型慢性肝炎の治療ガイドラインでもジェノタイプを測定して治療法を決定することが推奨されています。このHBVジェノタイプ判定検査が平成23年5月より保険適用となりました。B型肝炎患者さんの治療法の選択や検査を受けていただくペースを決める際などに有用と思われます。
B型肝炎は患者さんそれぞれ病気の経過も異なりますし、年齢やライフステージも考慮して治療法を選択していく必要があります。当院でもジェノタイプ検査なども併用して、患者さんお一人お一人に合った診療をさせていただきたいと思います。
肥満・糖尿病に伴う肝がん
近年、肝がんはB型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝障害の他に肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧を示すメタボリック症候群の一部(非アルコール性脂肪性肝炎)にも合併することが明らかとなりました。
糖尿病学会が10年ごとに行っている「アンケート調査による日本人糖尿病の死因」では、第1位が悪性新生物 (34.1%)、第2位が血管障害(26.8%)でした。
また、国立がん研究センターの調査による「糖尿病既往とその後のがんとの関連」では、肝がんのリスクが最も高いという結果でした。したがって、肝機能障害を伴っている糖尿病患者さんは、肝がんの高危険群と考えられますので糖尿病だけでなく、肝疾患としての診療も必要です。
当院ではこれら両面からも診療を行っています。